お客様の声
石川県白山市 石川県立翠星高等学校様 のご紹介
- 団体名・会社名
- 石川県立翠星高等学校
- お名前
- 生物資源コース 教諭 川端 伸様
実習助手 安田 英昭 様
- 水田住所
- 石川県白山市
便利すぎて困る!?paditchを導入した石川県立翠星高等学校にお話を伺いました!
明治9年に創業した、日本で最も長い歴史を有する農業学校、石川県立翠星高等学校。食・農・環境のスペシャリストの育成に取り組んでいます。
教育機関においてもスマート農業への関心が集まる中、2022年から翠星高校がpaditchの導入を決めました。農業高校がpaditchの導入を決めたきっかけは?導入のメリットは?稲作を担当する先生2人にインタビューしました。
水管理のための休日出勤が大きな負担に
――paditch導入のきっかけを教えてください。
川端:2022年度、石川県立翠星高等学校へのスマート農業推進の予算が下りました。今後生徒たちが就農することを考えると、高校生時代からスマート機器に触れていくことが大切だという考えからです。他の分野で植物工場のリニューアルやドローンの導入が決まる中、稲作分野で何ができるかを検討していたとき、笑農和の営業さんからpaditchのことを聞いて。便利そうだし、地域の農家さんの手本のような存在になれるのではと考え、導入を決めました。
――導入以前、水管理についての課題はありましたか?
川端:昨年、本校に着任したのですが、配属されたときにまず思ったことは、ゴールデンウィークに旅行ができないこと。水田は収益化をしていて責任も大きいことから、安田先生と2人で管理しています。平日であれば、部活前に水門を開け、部活後に水田に水が溜まっているのを確認して閉めるという作業ですが、休日はそうもいきません。時期によってはデリケートな管理が必要です。安田先生と分担して、休日も水田の様子を見に行っていました。
僕は通勤だけでも片道1時間かかりますし、水門を開けてから溜まるまで何時間かかるかを予想して待機しなければいけません。しかも僕自身が新任のため、うまく予想ができなくて。安田先生にスマホで写真を見せながら、「このくらいならば、何時間で終わりますか?」と適宜確認していましたね。大きな負担でした。
とはいえ、近隣の農家さんでこのような機器を使っている方はいませんでしたし、こんな便利な機械があることすら知らなくて。仕方ないと思っていましたね。営業さんから説明を受けたときは、なんて便利なものだと感じました。
ーー導入にあたって、苦労したことはありますか?
安田:近隣の農家さんへの説明です。水利組合に確認したり、近隣の水田の所有者さんに説明したりしました。僕たち自身もイメージが湧いておらず、「大丈夫だと思います」としかいえなくて。説明には苦労しましたね。結果的には、「詰まらないなら大丈夫」と受け入れてくださりました。
――ちなみに、教育的な反対意見はありましたか?
川端:少しだけありました。従来の機器を使えなくなるのではという意見です。
とはいえ、paditchは手動でも動かせますし、今までの水門も多少残っています。授業では、「今まではこうやって水の管理をしていた」と伝えています。
生徒たちのスマート機器への関心は高い
――実際にpaditchを導入してみていかがでしたか?
川端:水の開け閉めのために現場に行く必要がなくなり、移動時間が削減されました。家でもスマートフォンで操作できるのは非常に便利ですね。水の奪い合いの心配もないので、安心できます。
安田:導入前に「ゴミが詰まるかも」と聞いて、覚悟はしていました。確かに何度か詰まりはあったものの、スマートフォン上でゴミ詰まりの警告表示が出るので、トラブルには至りませんでした。詰まりを早く知れるのは、メリットでしたね。
――生徒さんたちの反応はいかがでしたか?
導入にあたり、笑農和さんから特別講義をしていただきました。機械に対する興味関心は皆高く、「paditchが一般化されたら、農業のきつい・辛い・早いというイメージはなくなりそう」などの意見がありました。今年度は田植機の自動運転やドローンによる散布も行ったのですが、どれも好意的な反応で。学生たちがスマート機器によって農業にポジティブな印象を感じていることが分かります。
ーー農業への就農を希望している生徒さんは多いのでしょうか?
川端:いいえ、多くはありません。自然や食が好きで専攻している生徒がほとんどで、専業農家の親を持つ生徒も例年0.5割程度です。進路についても、高校卒業後すぐに就農する生徒はほとんどいません。そのため教育においても、農業への関心を持ってもらい、ハードルを下げることが大事だと考えています。paditchは、農業へのハードルを下げる大きな効果があると感じますね。
――生徒さんたちが実際にpaditchの操作をすることはありましたか?
安田:今年は教員2名で操作しました。基本はスマホで、職員室ではノートパソコンを用いて、複数の田んぼを表示する形です。大画面で複数見られると、やはり使いやすいですね。タイマー機能や水位による調整機能はよく活用しました。昨年は、休日に水の管理のために出勤していたのが今年はゼロ。体感、仕事の3分の1が削減されたと思います。
川端:来年度以降は検討中ですが、今後も操作は教員で行う予定です。おそらく生徒たちに教えたら、私たちよりもすぐ使いこなせるようになると思いますが・・・・・・、正直言って便利すぎるんですよね(笑)。
農作物は教育目的だけでなく、実際に販売して収益につなげています。小さなミスが大きな損失になりかねません。簡単にスマホで操作できてしまう分、生徒にその責任を負わせることはできないと考えています。
今後については、生徒が実際に操作するのではなく、画面を見せたり、データを素にした研究授業につなげていきたいと考えています。今年のデータも蓄積されたので、来年の教材としての活用が楽しみですね。
paditchのデータを研究に役立てられる
――データ活用を考えているとのことですが、今年度、データで分かる変化はありましたか?
安田:実感として雑草が例年よりも減りました。水位が一定に保たれるため、除草剤をまいた後に薬剤が空気に触れて効果が薄れることがなかったためだと思います。
収量についても、正確には計っていないものの、一反あたり籾で50kg 玄米で30kg増加しました。
――paditchを使っていて、困った点はありましたか?
安田:使い方に慣れていない時期に勘違いでミスをしてしまったことがありました。ある水田だけ、根っこが固着せずに枯死してしまったのです。この問題が発生し、私たちはまずデータを確認しました。すると、その水田だけ水温が約8度になっていることが判明。普通ならば、同じ水源で一つの水田だけ水温が下がることはありえません。尻水を開けっぱなしにしていた結果、機械が水位を一定にするために入水し続け、掛け流し状態になっていたことが分かったのです。尻水は手動操作であることを忘れていた、私たちのケアレスミスですね。結果的に植え直しすることになりましたが、良い勉強になりました。
川端:データがあるため、すぐに原因が特定できました。農業は、冷害のほかにも薬害や害虫などさまざまな影響を複合的に受けるため、なかなか原因が分からず、対処に困ってしまうことが少なくありません。データで原因がすぐに分かったのは、すごく助かりましたね。やはり人間の記憶よりも、データの方が信頼できます。毎日のように同じ作業をしてしまうので、記憶があやふやになってしまうことも多くあります。水の管理がデータとして残るのは大きなメリットだと感じますね。
――今後、改良して欲しいポイントはありますか?
安田:機械が簡単に取り外せるしくみだとありがたいですね。トラクターやコンバインを旋回するときに接触しそうになりました。また、これから雪が降ると除雪車が通ることもあります。安全のために取り外しができるとありがたいですね。
――最後に、導入を考えている農家さんや農業高校の方々へのメッセージをお願いします!
川端:ここまでもお話ししてきた通り、我々教員にとっては大幅な効率化となりました。休日に水位を見るために出勤したり、水が溜まるまで待つ必要がなくなったのは非常に大きいですね。ワークライフバランスの面で、とてもありがたかったです。
生徒目線でも、スマート機器に大きな関心を抱いています。辛いイメージが強い農業において、スマート機器の発展は、これからの未来に農業を選択肢として選ぶ生徒の増加に貢献すると思いますね。
地域の方々にとっても、私たち農業高校がサンプルとなることのメリットは大きいと感じます。皆さん非常に興味があるようで、私のもとにも「どうだった?」と問い合わせが数件きました。私たちも導入前は不安でしたし、「使ってみたらこうだった」と身近に聞ける相手がいるのは大きなメリットだと思います。今後も地域の教育機関として、手本となるような存在を目指していきたいですね。
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取材協力:
石川県立翠星高等学校様 ホームページ
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